日本環境変異原ゲノム学会
The Japanese Environmental Mutagen
and Genome Society (JEMS)
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2020年05月07日
「環境エピゲノミクス研究会(EEG)」の再開について
この度永らく休会中の「EEG研究会」を再開いたします。その理由として、農薬Roundupが、ラットに「Epigenetic Transgenerational Inheritance : エピジェネティク継世代遺伝」を誘発するとの報告がありました。これまでの遺伝学・発生学では、哺乳類の生殖細胞はその配偶子形成で、さらに初期胚の段階で、すべての「細胞記憶」が消去されるものと考えられていました。「エピジェネティク継世代遺伝」は、これまでの変異原物質には認められなかった、重大な新規の毒性事象です。この現象はすでに2005年から報告されており、その後多くの内分泌かく乱物質などでも確認されています。
さらに、既知の変異原物質の中にも「エピジェネティク活性」が報告されつつあります。今後、多くの化学物質について、「エピジェネティク活性」についても解析し、その結果を考察することによって、さまざまな化学物質の「発がん性」をはじめとする、幅広い毒性作用の機序の解明が可能になるものと考えられます。これは「毒性学におけるパラダイムシフト」となります。
また、「エピジェネティク変異原物質」の中には、DNAやヒストンの修飾などの「エピジェネティク変異」を正常に復帰しうる化学物質も知られています。これらの中には、医薬品として利用できる可能性もあるものも存在する可能性があります。それらを探索し、的確に利用することなど、「環境エピジェネティクス」には新しい展開も十分に期待できます。
しかし、「エピジェネティクス」は、生物学・医学では新しい研究分野です。特に環境科学分野の「環境エピジェネティクス」の試験・研究には、まだ関心も低く、成果もこれからです。今後、特に若い研究者の方々が「環境エピゲノミクス研究会(EEG)」に結集し、この可能性を持った「環境エピジェネティクスの」の試験・研究分野を大いに展開・発展されることを切望しています。
なお、当面「環境エピゲノミクス研究会(EEG)」は、これまでのように日本環境変異原学会の一つの分科会ではなく、幅広い学会横断的組織としての活動を行ってゆく予定です。EEGでは研究会を年1回程度、夏頃に開催する予定です。さらにEEGのホームページ: http://eegs.web.fc2.com/を公開し、会員内外からの自由な意見交換もできる体制を構築する所存です。多くの方々の「環境エピゲノミクス研究会(EEG)」へのご参加をお待ちしております。
「環境エピゲノミクス研究会」を再開する会 代表 澁谷 徹